妖の街で出会ったのは狐の少年でした

12話 アクシデント

学校が終わり、宿屋に帰ると簡単な昼食が置かれており、食べ終わったら10分ほど休んで、ロクに着付けをしてもらい仲居の仕事をする。
(ごめんなさい、今はまだ言えません)
待つとは言ったものの気になるものは気になってしまう。
小さなミスを連発して
ミズキさんに心配をかけてしまう。
しっかりやらなければ。
仕事が終わり部屋に戻ってお風呂に入り、色々考える。
もしかしてロクは人間と妖、両方の血が入っている?
他の妖に比べて人間寄りの容姿なことにも説明がつく。でもそんなことってあるのか?でも人生・・・生きてる間は何があるか分からないとよく聞く。
というか、ロクの家族の話とか全然聞いたことないな。そんなことを悶々と考えそろそろ出ようと扉を開けると
ロクとばったり。
「し、失礼しました!」
ピシャンと扉が壊れるんじゃないかという勢いで閉める。幸いタオルを巻いていたので裸を見られることはなかった。
取り敢えず浴衣を着て、部屋に戻ると
ロクがいて、
食膳を持ってきた時私が入浴していたから置いて部屋に戻ったこと。
1時間半経ったので流石に食べ終えている頃だろうと思い部屋に入ったこと。
そしてまだ入浴していたので心配になり声をかけたが応答がないので、背に腹は変えられないと思い扉を開けようとしたらカズハ様が出てきたということを、
土下座されながら聞かされた。
「申し訳ありませんでした。」
「あの、別に私は気にしてないから」
「緊急事態とはいえ嫁入り前の女性の入浴を目の当たりにするなんて・・・」
「でも、いつも着付けしてもらってるし・・・あんまり変わらないと思うんだけど?」
「それはそれ!これはこれです!」
グワッという効果音が正しいくらい
勢いよく顔を上げ噛み付くように言った
「カズハ様は、危機感というか、恥じらいというものをもう少し意識してください」
さっきとは打って変わって、捨てられた子犬のように耳がシュンと垂れ、尻尾が下がっている。
慌てたり、謝罪したり怒ったり呆れたり落ち込んだり、ロクの感情はコロコロ変わり忙しそうだなと他人事に考えてしま
う。というか私2時間近く浴室にいたのか。
「取り敢えず、水分をとってください
涼しくなってきたとはいえ、2時間近く浴室にいたら熱中症になりかねます。」 
水をコップに入れ持ってきてくれた。
「ありがとう」
少しフワフワしていた気分が軽くなった
のぼせていたのかも知れない。
夕食をいただき、敷いてあった布団に横になる。
「一応、冷蔵庫に小さなお茶の缶が入っているので、それもよかったら」
「ありがとう、ロク」
「そういえばそろそろあお泊まり会がある頃ですね。」
「お泊まり会?」
「学校で一晩泊まるんです。この時期になると毎年の恒例行事なんです。」
「そうなんだ。」
「では、失礼します。」
そう言いロクは出て行った。
学校でお泊まり会か。どういうことをするんだろう。このあとお茶を飲み、
夜中トイレに起きる羽目になるとは思わなかった。


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