恋桜~あやかしの闇に囚われて~
「おまえのスマホ貸して。俺の、電波入らないみたいだ」
「はいよ」
助手席で呑気にペットボトルの蓋を開けていたミツルが、自分のスマートフォンを取り出した。
「……あれ?」
「どうした」
「ええー? 変だな。俺のスマホも駄目だ。でも、トンネルに入る前は電波来てたよな。ナビ見てたし」
「だよな」
最新機種の和真のスマートフォンも、通信キャリアの違うミツルのスマートフォンも『圏外』の表示になっており、通話もできなければ、当然インターネットにもつながらない。電源を落とし再起動させてみても、歩きまわって場所を移動してみても『圏外』のままだった。
既に日は落ち、山に囲まれた谷あいの廃村は闇に包まれている。ミツルのランタンがなければ、電波の入る場所を探して歩きまわることすら難しかったかもしれない。
「マジかよー。ホラー映画のオープニングみたいじゃねえ?」
「不吉なことを言うな」
茶化したようなミツルの冗談に、背筋がゾッとした。スマートフォンの使えない山奥の廃墟で迎える、電気のない夜。唯一の移動手段である車が動かないのに、助けを呼ぶこともできない。
「はいよ」
助手席で呑気にペットボトルの蓋を開けていたミツルが、自分のスマートフォンを取り出した。
「……あれ?」
「どうした」
「ええー? 変だな。俺のスマホも駄目だ。でも、トンネルに入る前は電波来てたよな。ナビ見てたし」
「だよな」
最新機種の和真のスマートフォンも、通信キャリアの違うミツルのスマートフォンも『圏外』の表示になっており、通話もできなければ、当然インターネットにもつながらない。電源を落とし再起動させてみても、歩きまわって場所を移動してみても『圏外』のままだった。
既に日は落ち、山に囲まれた谷あいの廃村は闇に包まれている。ミツルのランタンがなければ、電波の入る場所を探して歩きまわることすら難しかったかもしれない。
「マジかよー。ホラー映画のオープニングみたいじゃねえ?」
「不吉なことを言うな」
茶化したようなミツルの冗談に、背筋がゾッとした。スマートフォンの使えない山奥の廃墟で迎える、電気のない夜。唯一の移動手段である車が動かないのに、助けを呼ぶこともできない。