あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
アランは立ち上がると、私に向かって膝を曲げて優雅に挨拶をした。
「伊織さん、よろしくお願いします。」
少しイントネーションが英語に近いが、日本語も話せるようだ。
欧米の女性だからなのだろうか、とても身長は高い。
180㎝くらいはありそうである。
…悠斗さんと同じくらいの身長かな?…
私が案内をしながら歩き出すと、アランは静かに後ろから歩いてきた。
心臓が引き続きうるさく音を鳴らしている。
エレベーターに乗り込み、二人きりになると、アランは私に話し掛けて来た。
「ねぇ、…サクラさんっていう女性をご存じかしら?」
「…あ…あの…私も…伊織桜と申しますが…」
するとアランはいきなり口角と片眉を上げて悪戯な表情をした。
私の背の高さに合わせるように、膝を曲げて顔を覗き込んで来た。
「あらぁ…貴女がサクラさんなの?…へぇ~。」
なぜアランはそんなことを聞くのだろうか?
しかし、アランは私を頭の先から足元までジッと観察するように見ているではないか。
間もなくしてエレベーターは社長室のある最上階へと到着した。
社長室のドアをノックすると、珍しく悠斗さんが自分でドアを開けたのだった。
アランが来るのを楽しみにしているようだった。
そして、社長室のドアの前で悠斗さんは私の方を見た。
「伊織君、お茶はさっき深山君に頼んでおいたから、暫く誰も社長室には入らないでくれと皆にも伝えておいてくれ。」
「…はい。畏まりました。」
すると、アランは私の方を向いて口角を上げて微笑んで見せた。
心臓に何か鋭い刃物が刺さったような衝撃だ。
お茶も深山絵里に頼んで、誰も社長室に入れないでくれとは、どういう意味なのだろうか。
私を完全に避けているように感じる。
…おまけにアランの微笑も目に焼き付いてしまった。
何かが崩れるような音がしている。
悠斗さんと彼女はどんな関係なのだろうか。