あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

神宮寺は、いきなり私の手を引いて、店の外へ出るとホテルロビーへと向かった。

すると、どこかへ電話をしているようだ。

電話が済むと、神宮寺はフロントで鍵を受け取り歩き出した。
私がその場で立ち尽くしていると、早く来いとばかりにこちらに振り向いた。


「桜、着いて来てくれ…もう一度、出直すぞ。」


神宮寺は何を言っているのだろう。全く意味が分からない。
しかし、足早に歩いて行ってしまう神宮寺を追いかけるしかなかった。

そして到着したのは、ホテルの最上階の部屋だった。

恐らくここは、スイートルームかVIPルームだろう。
こんなに大きなホテルの部屋に入ったのは初めてだ。

大きなソファーが部屋の真ん中に置かれている。
ソファーは何人掛けだろうと思うほどの大きさで、テーブルを挟んで両側に置かれていた。

全く意味が分からない私は、固まって立ち尽くしていることしかできなかった。

神宮寺はソファーにドカッと音を立てて座ると、私にも座れとばかり、自分の座っている横をトントンと叩いた。


「すぐに、来るから座っていろ。」

「…来るって?」


すると、20分くらいたった頃だろうか、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
私は慌ててドアに向かい、ドアを開ける。


「お待たせ~急いで来たよ~!!」


明るい笑顔の男性と女性がドアの外で手を振っていた。
戸惑う私に気にすることなく、二人は部屋に入って来た。


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