あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

部屋に入って来た二人は、大きな荷物でとてもお洒落な雰囲気だ。

女性は髪を、黒い幅広のターバンの中にまとめて、耳には大きな輪のリングを付けている。
男性は少し長めの前髪でサラサラのツーブロック。
服装は二人とも黒を基調とした、動きやすそうなデザインだ。
まさに、アーティストという感じだった。


「ヒロ、マヤ、悪かったな、早く来てくれて助かったよ。」


神宮寺は男性を“ヒロ”女性を“マヤ”と呼んでいた。

二人が部屋に入って来ると、神宮寺は立ち上がり私の肩に手を置いた。


「桜、俺は店に戻っているが、準備が出来たら呼んでくれ。」

「あの…何を準備するのですか?」

「ヒロとマヤに任せておけば大丈夫だ、心配するな。」


全く意味が分からない。
神宮寺は悪戯な笑顔を見せると、部屋から出てしまった。

すると、まず動き出したのは、マヤと呼ばれた女性だ。


「桜さん、いくつかドレスの候補を持ってきたから、試着して…サイズはすぐに直すから大丈夫だからね。」


マヤは戸惑う私の手を引くと、奥の部屋へと移動させた。


「まずは、これを着てみて!」


手渡されたドレスを見て驚いた。体のラインに沿った美しいシルエットの黒いドレスだった。


「…マヤさん、私はこんな大人っぽいドレス…無理です。恥ずかしいです。」


マヤさんは、そんな私に片眉を上げると、私の服を強引にスルスルと脱がし始めた。
そして驚くほど手際よくドレスを私に着せたのだ。

思った通りだ、このドレスは背中がかなり深く腰まで広く開いている。
前側は二重の布になっているが、上の布は透けているような感じもする。


「桜さん…すごく綺麗だよ。思ったより胸も大きいし、最高だよ。」

「で…で…でも…恥ずかしいです。」


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