あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

そして、神宮寺はさらにお店の奥へと進むと、祥子が周りの女性たちと楽しそうに会話をしているところに近づいた。
どうやら、聞こえてくる内容は自分の自慢話のようだ。

祥子は、自分の視界に私と神宮寺が入ると、急に話を止めてこちらを向いた。
その表情から、かなり驚いているように見える。

その祥子に向かって神宮寺が話をする。


「祥子、お前のパパは挨拶に来ていないのか?」

「う…ん、もうそろそろ来る予定だけどね。」


祥子のお父様に用事があるのだろうか。
それよりも、祥子のお父様は何者なのだろう。

そんなことを考えていると、祥子が入り口に向かって手を振った。


「パパ、こっち来て!」


祥子の呼びかけに、父親は控えめに手を上げると、こちらに向かって歩いてきた。

すると、神宮寺は私の耳元に小声で囁いた。


「今日、桜に来てもらった理由が歩いてくるぞ、俺に話を合わせろ。」


神宮寺は確か、ここに来る時に紹介したい人がいると言っていたが、彼のことなのだろうか。
俺に話を合わせろと言われても緊張する。

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