あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
「さ…先程は、助けて頂き、ありがとうございました。」
先方の会社を出たところで、私は神宮寺に頭を深々と下げた。
すると、神宮寺は先程までのさわやかな営業スマイルとは程遠い表情をしている。
片眉と片方の口角を上げて、少し意地の悪いバカにしたような笑顔を向けた。
「伊織、お前はその歳で、あのくらいの事に嫌な顔をするな。」
「…っえ?」
「助けてやったのではない。誤解するな。それより、俺に恥を搔かせるなよ。」
神宮寺は、それだけ吐き捨てるように言うと、スタスタと歩き出した。
私はその場から動けず、固まっていると、後ろからポンと私の肩を須藤が叩いた。
「伊織さん、気にすることないからね。もう気づいたと思うけど、神宮寺は悪い奴ではないけれど、かなり俺様なところがあるんだ。聞き流していれば大丈夫だからね。」
須藤から慰めるように、言われた言葉に驚いた。
初めて会った時には、あんなに紳士的に接した神宮寺だったのに、本当はこんなにも俺様な性格だったのだ。
ほんの少しでも、助けてくれたと思った自分がバカだった。
やはり、神宮寺は私が憎んでいた男だ。