貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
 男はバーの下の階に真梨子の手を引いていく。下りてすぐの部屋のドアノブにカードキーをかざすと、ドアが開くと同時になだれ込む。

「……この部屋っていつとったの……んっ……」

 真梨子の質問を飲み込むように、男は口付ける。彼女の体を壁に押し付け、貪るようにキスを続ける。

「内緒。それよりこっちに集中して」

 服を脱がされると、今度は真梨子が男を壁に押し付ける。自分から唇を押し付けながら、男の服に手をかける。

 二人とも露わになると、ベッドに倒れ込む。

 真梨子は体の隅々に男の舌の動きを感じ、思わず身を震わす。

「ねぇ……」

 乱れる呼吸の中、真梨子は声を絞り出す。

「あなたの名前を教えて……」

 男は動きを止めると、真梨子に覆いかぶさるようにして口付ける。

(ゆずる)

 そう言うと、真梨子の胸の頂をじっくり攻めていく。

「あっ……」
「……名前呼べよ……真梨子……」

 譲に言われ、真梨子は彼の髪に指を滑り込ませると、果てるまで彼の名前を呼び続けた。
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