貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
* * * *
シャワーを浴びて、着替えをしながら、真梨子はまたため息をついた。
こんなはずじゃなかった。私はこんなに軽い女じゃないし……こんなに気持ち良い行為をしたのは初めてだった。
譲はそんな真梨子の百面相を見ながら笑いを堪えている。
「今夜のこと、後悔してるのか?」
「……というか、私の倫理に反してるというか、こういう成り行きに任せた行動はしないと決めていたのよ……」
「仕方ない。真梨子も衝動を抑えられなかったってことだろ? 俺も同じだから」
「あなたね……」
不機嫌そうに振り向いた真梨子とは対照的に、譲は楽しそうな表情を向けていた。
真梨子が譲に背を向け、カバンからメイク道具を出そうとすると、背後から彼に抱きしめられる。
「……何?」
「いや、もう一回したいなぁと思って」
「ダメ。明日は大事な講義があるし」
「それって、講義がなかったらしてもいいってことだよな」
「……知らない」
「元彼よりは良かっただろ?」
「それは否定しない」
譲の手が真梨子のスカートの中に入り込もうとするのを、平手で妨げた。
すると今度は真梨子の腿の上を彷徨い始めた。まぁこれくらいはいいか……真梨子はクスッと笑う。
「なぁ、真梨子ってどこの大学?」
「内緒」
「じゃあ何年生?」
「四年生」
「マジ。同い年だ」
「えっ、そうなの?」
驚いたように振り返った真梨子に、譲は長く味わうようなキスをする。
昨日から一体何回キスしてるのかしら……。この慣れた感じが腹立つのに、つい気持ち良さに目を閉じてしまう。
「真梨子、俺たちって体の相性良かったよな」
「さぁね。あなたが上手なだけじゃない? 相当経験値高いんでしょうね」
「……俺の勘違いだろうか。真梨子がヤキモチ妬いてるように聞こえる」
「勘違いにきまってるでしょ。なんでたった一日過ごしただけの男にヤキモチ妬くのよ。あんたに食い物にされた女子がどれだけいるのかと思うと悲しくなるだけよ」
「まぁ俺は来るもの拒まず、去るもの追わず主義だしな」
「やっぱり最低」
譲の手を振り払おうとしたが、既に読まれていたのか、手を掴まれてしまう。