西園寺先生は紡木さんに触れたい
「蓮の家って、会社を経営してるの。
北山田製紙株式会社っていう…蓮も卒業したらそこに務めるんだけど…。
この間、蓮のお母さんがウチに会いにきてね…ウチと出会ってから蓮は変わった、蓮を返せって泣き叫んで…。
それが、怖くて…。
お母様は蓮に継がせるつもりだったんだけど、今の蓮にはそんな意思もなくて、
それが私のせいだとしたら、別れるしかないって…。
でも普通に別れるって言われて引き下がるような男じゃないでしょ?
だから親友に協力してもらったの。
…ツムちゃん、ごめんね。ツムちゃんに相談したのは、最後に背中を押してもらいたかったのかもしれない。
それに、蓮が色々迷惑かけたでしょ。」
そう言って涙を滲ませながら笑う葵に、紡木は一生懸命首を横に振った。
私のせいで。
私が何も考えずにアドバイスしたせいで
2人の仲を引き裂いてしまった…。
「…このこと、蓮には内緒にしてほしいな。」
そう言ってお願いする葵に、紡木は素直に頷けなかった。
蓮がどれだけ葵のことを想っているのかを分かってるからこそ…。
その時、化学室のドアが開いた。
そこには完全に息を切らして髪の毛もボサボサな先生と、かなり不貞腐れている顔をした蓮がいた。
よかった。戻ってきてくれて。
じゃなきゃ赤点になっちゃうもんね。
紡木はそう素直に思うと、再びプリントに向かった。
蓮も無言で席に着くとプリントに向い始めた。