西園寺先生は紡木さんに触れたい
「ええ、そんなことありましたっけ…?」
紡木は首を傾げてそう言った。
「覚えてないの?」
西園寺は少し悲しい気持ちになったが、彼女にとって特別なことでなく当たり前のことをしただけだから記憶に残っていないのかもしれない。と思うとますます好きが増えた。
「じゃ、じゃあ、これは?」
西園寺はそう言うと、去年の体育祭での出来事を話し始めた。
「痛…。」
西園寺は右手の中指を押さえてコソコソとグランドの外を歩いていた。
押さえた指の隙間から血が滲む。
普段は使わない木の箒を佐野先生に頼まれて出そうと手に取ったところ、ささくれていた部分が指に深々と刺さってしまったようだった。
大人にもなってこんなしょうもない怪我をすることが恥ずかしくもあったし、女子生徒に囲まれて面倒なことになる前に、とそそくさと保健室に向かった。
ついでに少し休んでいこう。
西園寺はにやりと笑った。
「…っと、絆創膏…どこだろ。」
先生に許可を取って保健室に入室したは良いものの、どこに何があるか分からず西園寺は手を焼いていた。
「ここですよ。」
「わあっ!」
後ろから突然声を掛けられた西園寺は思いっきり飛び跳ねた。