西園寺先生は紡木さんに触れたい
そんな2人を尻目に、西園寺は千秋に近づいて「ちょっと。」と声をかけた。
「おーこわ。どうしたの、そんな顔して。」
滅多に見ない西園寺の表情に、千秋は半笑いでそう茶化した。
「紡木さんのこと、ナンパしてたでしょ。」
「あー、うん。それで?俺の教え子だからナンパするなよって?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらそう言う千秋に、西園寺は更に表情を険しくした。
「それは、関係ない。…と言ったら嘘にはなるけど。その前に…彼女は、俺の好きな人だから。
半端な覚悟で手出しするな。いくら千秋だからって、それは許さないからな。」
西園寺は一生懸命苛立ちを噛み殺しながらも、普段よりも低い声でそう述べた。
「ふうん。本気ならいいんだ。」
その言葉に西園寺はキッと睨むと、「わかったわかった。だからその顔もうやめてくんない。」と千秋は両手を上げて面倒臭そうに言った。
今までコイツに近寄ってくる女の子を何度もつまみ食いしても何にも言わなかったし、彼女を寝取ってもケロリとしてる男が、こんなに独占欲をむき出しにしてくるなんてねえ…。
それにしても…。
千秋は心の中でそう前置きすると、こっそりと呟いた。
「てかアンタってロリコン?…いやまあ、花奏ちゃんって大人っぽいけどさあ。」
「いや、そうじゃないと信じたい…。」
そう自信なさげに返事をする西園寺に、千秋はハハ、と乾いた笑いを送った。