西園寺先生は紡木さんに触れたい
半階分、階段を降りたところで、スーツ姿の男が下から階段を登ってきていたのが紡木の目に入った。
柔らかそうな栗色の毛、色白な肌、スッと伸びた鼻筋に、形の整った二重の目には、窓の外から漏れる光を受けて輝いていた。
ああ、そうだ。
この人、昨日保健室にいた先生だ。
女子生徒に人気で、いつも囲まれてて、
皆、ケイト先生って下の名前で呼ぶから気づかなかったなあ。
えっと、なんだっけ。サイ、サイ…あれ、保健室の先生、なんて言ってたっけ?
そんな風に呑気に思っていると、二人の視線がばちりとぶつかった。
うわ、気まずい。挨拶とかするべき?
なんて考えている間に自然と言葉が出ていた。
「体調大丈夫ですか?昨日…保健室にいましたよね?えーっと、あの…。」
「え?あ、ああ!…ありがとう、全然大丈夫だよ。」
紡木が話しかけるや否や、にこにこと笑顔を浮かべる西園寺に紡木は大きな賭けに出た。
「えっと〜…あ、サイコウジ先生!」
なんとなく、みんなと同じ様に下の名前で呼ぶのは恥ずかしかった。
「…サイオンジ、です。」
二人の間に気まずい空気が流れた。