西園寺先生は紡木さんに触れたい

「ケイト先生、久しぶりー!」


「かっこいい〜…。」


「夏休み何処か行ったの〜?」


「あ、せんせ!これおみやげ!」


夏休み明け初日だからか、いつもよりも更にざわつく廊下に、紡木は一生懸命聞こえないふりをした。


「いつも思うけどすげーよな、西園寺って。どうやったらあんなにモテんだろ…。」

そう何の気なしに呟く蓮に、紡木はハハ、と流した。


「お久しぶりですね。お土産ありがとうございます。夏休み、特に何処にも行ってないですよ。…あ、もう教室に戻らないと。」


いつもより丁寧に対応する西園寺の声に、紡木は今まで絶対に見たらダメだと言い聞かせていたはずだったのに、思わず視線を向けてしまった。


あ…。


ばちりと視線が重なると、西園寺は笑顔を向けるわけでもなく、手を振るわけでもなく、ただ気まずそうに目を伏せて紡木から視線を逸らした。


そう、だよね。


あんな蕁麻疹だらけの腕を見たら気持ち悪がられてもおかしくないし、

男性恐怖症だって打ち明けたら、あんな反応するのが普通だよね。

でも…


(紡木の腕、キモチワリー!)

(うわっ、コイツ触っただけなのにゲロ吐いた!)

(私もダンセイキョウフショウがうつっちゃう〜。)


先生は違うって、どこかで期待してたのかもしれない。


バカみたいに優しくて、犬みたいに健気で、私を想ってくれていた先生だけは…。



そう思って、初めて自分が傷ついていることに気がついて紡木は驚いた。


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