西園寺先生は紡木さんに触れたい

「で、なんで勉強なんてしようと思ったの?」


放課後、いつもの屋上の踊り場で紡木は蓮の隣に腰掛けて聞いた。


「あのさ、話すと長くなるんだけどよ…。」


なぜか求人情報誌を片手に持つ蓮は、そう前置きして話し始めた。


「…実は、最後の補講の日、駐輪場で葵とツムツムが話しているのを聞いちまって。

まさか、母さんが原因だとは思ってなかったから、ショックで…でも俺は結婚するなら葵しかあり得ないって考えてるし、どうしても認めてほしくて母さんに聞いたんだ。

そしたら、二学期のテスト、全教科90点以上にしたら認めてやるって。」

「なるほど、それで私に勉強を教えてくれって?」


紡木がそう聞き返すと、蓮は「おう。」と頷いた。

「いや、私も勉強は全然得意じゃないし教えるなんて…。」


そう困り顔で返す紡木に、蓮は深々と頭を下げて「そこをなんとか…!」とお願いした。


「わ、わかったよ…で、その雑誌は何?」

紡木は蓮の手に握られている雑誌を指差した。
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