西園寺先生は紡木さんに触れたい

『はあ?馬鹿じゃねえの。』


電話口から聞こえる千秋の声は、言葉の通り心底馬鹿にしたような声だった。

その言葉に西園寺は何も言えず黙っていると、千秋は大きなため息をついた。


『相手の幸せの為に自分が身を引くってこと?ダッサ。』

千秋は既に酒が入ってるのか、いつもより言葉がキツい。

『てか何でアタシに話すの?あ、アタシが花奏ちゃん狙っていいってこと?』


「違う…ただ、俺って友達が少ないだろ?」


『その数少ない友達の中からアタシを選ぶとか、アンタ馬鹿だね〜。』


そう言ってケタケタと笑う千秋に、西園寺もハハと乾いた笑いを返した。


『相手の幸せの為に身を引くって、それ自己陶酔の極みでしょ。

こんなに相手を想える俺カッコいい〜、ってか?そんなのダサすぎ。

それが花奏ちゃんにとっての幸せって花奏ちゃんが言ってたの?』

そうハッキリと言い捨てる千秋に、西園寺の心は珍しく傷ついた。

そうではない、本当に紡木さんのことを想って、なのになぜか反論が出来なかった。
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