西園寺先生は紡木さんに触れたい

「も、もしもし…。」

自分でも驚くほど震えている声に、紡木は驚いた。


『もしもし、紡木さん…急にごめん。

メッセージでもよかったんだけど、なるべく早くに話がしたかったから。』


謝る西園寺に、紡木は「いえ。」と返すと、西園寺は少し間を開けてから、再び口を開いた。


『今、まだ学校にいる?もしよかったら、準備室に来てほしいんだ。…話したいことがあるんだ。』

紡木は少し悩んでから、「はい。」と答えた。


律儀な先生のことだから、やっぱり好きじゃありませんでした、ごめんなさい。なんて謝ってくれるのかな。


そう考えると泣きたいような笑えるような不思議な気持ちになって、紡木は「すぐ行きます。」と言って一方的に切ってしまった。


この何とも言えない気持ちは一体何なんだろう。

真正面から自分を否定されて、受け入れられませんって拒絶されるのが怖いからか。

でももう、慣れっこだ。
大丈夫。

紡木はそう自分に言い聞かせて、化学準備室へと向かった。

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