西園寺先生は紡木さんに触れたい
「先生、入ります。」
紡木は中に声をかけてからドアを開くと、西園寺は彼女を真っ直ぐ見つめて、座るように促した。
心なしか今までよりも距離をあけてくれている西園寺の優しさが、今の紡木の心には冷たく沁みていった。
「急に呼んだりしてごめんね。」
そう言って電話口と同じように再び謝る西園寺に、紡木は首を横に振った。
そんな彼女を見て、西園寺はフッと微笑んだ。
「やっぱり、僕は紡木さんが好きだ。」
自然と西園寺の口から溢れた言葉に、紡木は目を大きくして西園寺を見つめた。
思っていたような言葉とまるで正反対の言葉。
思わず西園寺を見つめた紡木は、少ししてから恥ずかしそうに視線を逸らした。
西園寺はそんな彼女がやっぱり愛おしくて自分が下した決断は間違ってなかったかもしれないと思った。