西園寺先生は紡木さんに触れたい
「じゃあ、早速…。
まずは恐怖症になるきっかけとなった出来事と向き合うことが必要なんだって。
紡木さんはどういうきっかけで、恐怖症になってしまったのか、僕に話せる…?」
紡木の顔色を伺うように見つめる西園寺に、紡木は顎に手を添えて考え込んだ。
「全然…思い出せないんです。
ただ、いつの間にか蕁麻疹が出るようになって、それを揶揄われるうちにどんどん悪化していったのは覚えてます。」
幼少期にきっかけとなる出来事があったのかもしれないが、いくら記憶を辿っても紡木は思い出せなかった。
「そっか…じゃあ男性のどこが怖いと感じたりするのかな?」
紡木は再びうーん、と考え込んだが、そう聞かれると全く思い浮かばなかった。
ただ漠然と怖くて、気色が悪いものだと勝手に脳が判断しているようだった。
「わからないんです。…すみません、本当に。」
申し訳なさそうに言う紡木に、西園寺は「謝らなくていいよ。気を取り直して次の治療法見て見よう。」と言って、紙に視線を戻した。