西園寺先生は紡木さんに触れたい
「あった、これこれ。」
西園寺はそう言うと机の上にゴム手袋が入ってる箱を出した。
「紡木さんもしてみて。」
西園寺は箱から取り出した手袋をはめながら、紡木にもそう促した。
「よしつけたね。」
西園寺は紡木がゴム手袋をつけたことを確認すると、彼女の手元へと手を伸ばした。
「えっ、ちょっ!」
驚いて声を上げる紡木の手に、そっと西園寺の手が触れた。
「大丈夫…かな。」
手袋から出ている腕の部分に異変が起きていないことを確認すると、西園寺は紡木の顔を覗くように見つめた。
「っ…。」
紡木は恥ずかしさと緊張で顔を真っ赤に染めた。
不意に触れられる時とは違って、優しく触れられると蕁麻疹こそは出なかったが何故か気が狂いそうだった。
「ちょ、ちょっと、紡木さん?呼吸できてる!?」
西園寺の心配する声に、自分が無意識に呼吸を止めていたことに気がついて、ふうーっと長く息を吐き出した。
「ごっ、ごめん、びっくりしちゃったよね。」
「…いえ、こちらこそ…本当に慣れてなくて…。」
真っ赤になった顔を手で風を送りながら熱を覚ます紡木に、今までとは違うウブな反応をされた西園寺は煩悩で満ち溢れた脳内を首を振って吹き飛ばした。
「でも、蕁麻疹は出なかったので、今度は私が手袋を外してみます。」
思いの外意欲的な紡木に、西園寺は内心驚きながら平静を装って「そうだね。」と返事をした。
紡木は手袋を外すと、「はい。」と西園寺の前に手を差し出した。
西園寺はそれをゆっくりと握り返した。
大丈夫。大丈夫。
怖くなんかない。
そう言い聞かせるが、先ほどよりもより鮮明に感じる西園寺の体温に、紡木は今度こそ気が狂いそうだった。