西園寺先生は紡木さんに触れたい

「ツムツム!聞いてくれ!!」


次の日の朝、紡木がいつものように席について荷物を片付けていると、まだ黒髪が微妙に見慣れない蓮が紡木の元へと駆け寄ってきた。


そのいつものしかめ面からは想像もできないほど輝いている笑顔に、紡木は「どうしたの?」と笑いながら蓮を見上げた。


「バイト受かった!」


ドヤ顔を浮かべてそう言う蓮の言葉に、紡木は小さく拍手をした。


「よかったじゃん!どこに決まったの?」

「駅内にコンビニあるだろ?あそこ!今日から週6で入るしいつでも来いよ!」

「いや、今日はちょっと用事があるから…。ていうか週6って…勉強いつするの?」

「えっ…。」


紡木が心配そうに聞くと、蓮は全く何も考えていなかったらしく、声を上げて首を傾げた。

「いつやるんだろう?」

「いつやるんだろう?…って、せめてテスト前は意地でも勉強しないと、80点以上なんて夢のまた夢だよ!」

「お、おう…とりあえず、テスト前に頑張るからよろしくな!」


そう言ってそそくさとこの場を去る蓮に、紡木はため息をついた。


まあ、でもせっかくだし行ってあげるか。
…今日は楽しみにしていた用事があるから行けないけど。


そう心の中で呟いて、紡木は再び机の中の整理を始めた。


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