西園寺先生は紡木さんに触れたい

「やだー!花奏ちゃん、本当に可愛い!あのバカになんて勿体無いわよ。…ねえ、圭統に変なことされてない??」

「えっ、いや…っ全然!」


千秋にそう聞かれた紡木は、無意識のうちにゴム手袋越しに伝わる体温を思い出して顔を真っ赤にした。

かと思えばそれを打ち消すようにブンブンと首を振って否定した。


そんな様子の紡木を見て「怪しい〜。」とニヤリと笑いながら見つめる千秋に、「あっ、いや、それより!千秋さんと西園寺先生って、仲悪いんですか…?」と一生懸命話題を変えた。


千秋に初対面の時から、西園寺に対して当たりが強いのを紡木はなんとなく気にしていた。


「あー、仲悪いっていうか…、まあ昔一悶着あってね。

今はもうわだかまりは解けてるからこうしてつるんでるんだけど、今の感じはその時の名残かな〜。」

「ええ、なんですかそれ、聞きたい!」


きらきら目を輝かせた紡木に見つめられた千秋は、盛大に話を逸らされたな、と思いつつも口を開いた。


「私、同性愛者だって言ったでしょ?それに気づいたのが中学2年の時だったんだけど。


初めて好きな子ができて、その子と仲良くなって、同じ高校に行きたかったから馬鹿なりに勉強も頑張って…


相手の子は、私のこと全然友達としてしか見てくれてなかったけど、慎重に距離を詰めていっていたのに、高校に上がると同時に一瞬で圭統に奪い取られたの!

まあアイツはそんなこと知らなかったした悪くはないんだけど、そんな素直に受け止められる年頃じゃないじゃん?

で、色々と食ってかかってるうちに、アイツって優しいし良いやつじゃんってなって今も絡んでるわけ!樹もその時同じように圭統にやっかんでたし仲間って感じ?」


そう笑いながら届いたパスタをくるくるとフォークに巻く千秋に、紡木は「へえ…。」と呟いた。
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