西園寺先生は紡木さんに触れたい
何があったのか聞くべきか、それとも聞かずに全く別の話をするべきか、西園寺が心の中で葛藤をしていると、紡木が「あの…。」とおずおずと声を上げた。
その声に西園寺はすかさず「どうしたの?」と聞くと、少し間を開けてから紡木は再び口を開いた。
「先生は…私が男性恐怖症を克服するのに協力しれくれるんですよね…?」
不安げな表情で西園寺を見つめる紡木に、彼は「勿論!」とはっきり答えた。
「じゃあ…先生に聞いてほしいことがあるんです…。」
「うん。聞くよ。」
力強く頷く西園寺に、紡木は一瞬安堵の表情を浮かべた。
「私、男性恐怖症になったきっかけがわからないって、この間言ったじゃないですか。
でも、思い出したんです、さっき…あの人…お父さんと会ってから…。」
紡木の声がみるみるうちに震えてると、西園寺は彼女を優しく抱きしめたい衝動に駆られて、ぐっと抑えた。
「小さい頃…お父さんが知らない女の人と裸で寝てて…
気持ち悪くて、怖くて、私に近づいてきた父が女の人に触った汚い手で私に触ろうとしてきて…
その時に初めて蕁麻疹が出てきたんです…。」
涙を零しながら一生懸命に語る紡木に、西園寺はただうんうん、と相槌を返したが、内心怒りに震えていた。