西園寺先生は紡木さんに触れたい
「それから、男の人に触られるたびに気持ちが悪くて、怖くて、男の人全員がそうじゃないってわかっていても、自然と…ごめんなさい…。」
「紡木さんが謝ることじゃないよ。…悪いのはお父様だ。」
「…ううん、ただ先生に申し訳なくて。
先生はそんな人じゃないって、わかってるのに、身体はわかってくれなくて…。
もし、私が普通の人間だったら、もっと普通に恋をして触れられたのかもしれないと思うと…。」
…紡木さん。
君はいつだって自分のことより他人のことばっかり考えて…。
西園寺はソファにかけてあったタオルケットを広げると、紡木をそれで包むこむように抱きしめた。
紡木はタオルケット越しにいきなり抱きしめられると、驚いてびくりと肩を揺らした。
「大丈夫。僕の手が汚く見えても、こうしてタオルケット越しに抱きしめられたら、手袋越しに紡木さんに触れられたら、僕はそれでいいから。」
そう優しく囁くと、紡木は声を上げて泣き出した。
先生は、優しすぎる。
それに先生に抱きしめられてると、温かくて、優しくて、恐怖を感じるどころか不思議と落ち着いて。
これって、もしかして…
いや…
急に眠気に襲われた紡木は考えることを放棄して、目を瞑った。