西園寺先生は紡木さんに触れたい
「あ、紡木さん。テーブルに座っててね。」
そう言って顔だけこちらを向ける西園寺の言葉に甘えて、紡木はダイニングテーブルに向かった。
ガラスでできたそれは素人が見ても相当値段が張るものなんだと分かる。紡木は傷をつけないように慎重に椅子に腰を掛けた。
少しすると食パンと目玉焼き、それにベーコンが乗ったお皿が運ばれてきた。
「ごめんね、野菜がなくって…。」
そう申し訳なさそうに紡木の目の前にお皿を置く西園寺に、彼女は大きく首を振った。
「ありがとうございます。…いただきます。」
紡木は手を合わせてそう言うと、朝食に手をつけ始めた。
そんな彼女を西園寺はにこにこと眺めながらコーヒーを啜った。
「先生は朝ごはん食べないんですか?」
「ああ、僕はこれだけで充分。」
そう言いながら西園寺はコーヒーカップを揺らすと、紡木は不思議そうな顔をして「へえ。」と呟いた。