西園寺先生は紡木さんに触れたい
「これ、霧島くんにやるように言ってもらえる?」
そうキッと睨まれながら言われれば、頷く以外に出来ず、あろうことか紡木はその画用紙を受け取ってしまった。
委員長は紡木が画用紙を受け取るや否や、「じゃあ。」と言って颯爽と持ち場に戻って行ってしまった。
そんな様子を2人以外の生徒は唖然とした様子で見ていたが、気の強い委員長に反論できるわけもなく、かといって自分が紡木の代わりに学年1の問題児に仕事をやるように言おうか?なんて提案できるはずもなく。
しばらくするとまたいつもと同じ放課後に戻っていった。
真衣や瞳も「大丈夫?ひどいよね。」と紡木を心配こそしたが、それ以上は何も言えなかった。
まあ、霧島くんにお願いすることはできる。
けど…
『ああ、これは、葵に婚約指輪を買ってやりたくて…バイトしようと思ってさ。』
葵の為にバイトに週6で入ってってしてる霧島くんに協力すると言った手前、ただお願いするのも気が引ける。
『葵の代わりなんてこの世に1人も居ねえんだから。』
『世界でなによりも愛してんだ。』
そう真っ直ぐ、一途に想う霧島くんに、私は結局のところ何もできてない。
だから。これくらいは。
紡木はそう心の中で呟くと画用紙を机の中にしまい込んだ。