西園寺先生は紡木さんに触れたい
男性恐怖症を言い訳にして今まで男子と話す機会もそこまでなかった紡木は、高3の秋にして青春を感じていた。
父と予期せぬ再会を果たしてから…もちろん怖さもあった。
でも恐怖症になった原因がわかったこと、あの日西園寺先生に触れても何も怒らなかったことで、もしかしてもう普通の女の子と同じように男性と触れ合えるんじゃないか、と期待と自信に溢れていた。
「まだ残ってたの?」
2人ではしゃぎながらも夢中で描いていると、突然頭上から声が降ってきた。
2人して驚いてその声の方を向くと、そこには口の端だけをわざとらしく上げた西園寺が立っていた。勿論目の奥は笑ってない。
「あ、おっす!文化祭の準備してたす!」
西園寺から向けられた敵意など気づいていない牧野は、そう言って画用紙を西園寺に見せつけた。
「ふうん。」
西園寺は面白くなさそうにそう呟いてから、紡木の方に目をやった。
目が合うと何故か気まずそうに逸らすつ紡木に西園寺のイライラはさらに募った。
大人気ない。子供じみてる。
自分の幼稚さに心の中で舌打ちをすると、近くにあった椅子を引き寄せて、紡木と牧野の間を割るように座った。
「あ、先生も手伝ってくれんの?文化祭で使うポスター描いてんだけど。」
連日文化大の準備やその後に控えてるテストの準備で大忙しの西園寺には、本当はこんなことしてる暇などないのだが…。
紡木と牧野を2人きりにすることは到底できなくて、西園寺も手伝うことにした。