西園寺先生は紡木さんに触れたい

「うん、女の子は誰かに大切にされて、お姫様扱いされると好きになっちゃうのよ。

今時オラオラ系とか亭主関白は古いのよ。」


堂々と語る紡木に、西園寺は思わず尊敬の意を向けた。


紡木さんって…化学のテスト毎回赤点ギリギリのバカなのに、恋愛のことになると…すごいんじゃん!


貶されてるのか、褒めているのかわからない言葉を胸中で呟く西園寺は、相談相手である男子生徒の足音が聞こえて、咄嗟に身を隠した。


そこで屋上の鍵を締めるという仕事を思い出し、階段を登り始めようとすると、紡木も丁度上階から降りてきたらしく、ばちりと2人の視線がぶつかった。



何か声を掛けようか。

でもなんて声をかけたらいいのかわからない。


どうしよう、このまま通り過ぎるなんて、嫌だ…。



「体調大丈夫ですか?昨日…保健室にいましたよね?えーっと、あの…。」


「え?あ、ああ!…ありがとう、全然大丈夫だよ。」


西園寺が葛藤している間に、紡木の方から話しかけられて、一瞬驚いて目を丸くした。

それでも瞬時にいつもの笑顔に切り替えて返事をした。


紡木は何かを思い出そうとしているような仕草で、西園寺は不思議に思っていたが、それが何かはすぐにわかった。


「えっと〜…あ、サイコウジ先生!」



「…サイオンジ、です。」

ああ、紡木さん。

僕は君に名前すら覚えてもらってないんだね。


西園寺はがくりと項垂れた。


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