西園寺先生は紡木さんに触れたい
おかしい。
一昨日からこのもやもやする気持ちはなんなんだ。
急に…。
いやいや、冷静にならなきゃ。
26歳のいい大人でしょ。僕。
そうは思っていたはずなのに、どうしてだろう。
たまたま昼休みに通りかかった3年5組の教室の前。
たまたま中を見ただけなのに。
紡木さんと霧島くんという男子生徒が顔を突き合わせて話しているところを見ただけで、居ても立っても居られなくて、用もないのに呼び出してしまった。
しかもまた女子生徒たちに囲まれている中で。
どうしようか、と内心焦りながら西園寺は考えた。
あ、そうだ。これしかない。
「なんですか。」
不機嫌そうな紡木に対して西園寺は精いっぱいの笑顔を返した。
「僕、あの日体調悪かったわけじゃないんだ。でも、心配ありがとうね。」
「はあ。」
つれないなあ。紡木さんってば。
西園寺は内心ククク、と笑った。