西園寺先生は紡木さんに触れたい
「あんなクソ男、さっさと忘れたいの!」
「誰がクソ男だって??」
その瞬間、葵の影から現れた険しい顔をした男子生徒に、紡木は身体を強ばらせた。
彼の言葉によるとおそらく葵の元彼氏、つまり昨日紡木が浮気を暴いた張本人だろう。
「ぎゃっ!」
葵は彼の声が聞こえるや否や、野太い奇声をあげて自分のクラスへと逃げていった。
紡木も一歩遅れてこの場を離れようと一歩後ずさったところで、彼─霧島 蓮(きりしま れん)に、腕をがしりと掴まれた。
「逃さねえぞ…!」
「や、やだっ!」
あ、だめ…手を、離して、…
学年一、治安が悪い見た目の彼に凄まれた紡木は、腕から登ってくるブツブツと蕁麻疹が浮かび上がる感覚に焦りを覚え、ぱくぱくと口を開いたと同時に、失神した。
「えっ、ちょ!オマエ!え、なんで!?」
慌てふためいた蓮は、一先ず紡木をおぶさると、白々しい視線を感じながら保健室へと走り出していった。