西園寺先生は紡木さんに触れたい

何なんだ…。


あの子。


「本当に、掴みどころがないな。」


ハハっと笑いながら、西園寺は掌に乗ったチョコレートに視線を移した。


僕のことなんて一切見てないと思ってたけど
目の下のクマとかバッチリ見られてたんだな。


西園寺はチョコレートの包み紙を開けるとそのまま口に入れた。


疲れの溜まった身体に甘さがじわじわと広がる。


…うん。
完全栄養食品は本当かも。


そう思うほど、一粒ぽっちのチョコレートで何もかもが吹き飛んだ。





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そんなことなど記憶に残ってすらいない紡木は、颯爽と自室に篭ると、「なんで、いちごミルク好きなの知ってるんだろう…。」と独りごちた。



それに。
連絡先もほぼ強制的に交換しちゃった。


こんなの先生のファンクラブ会員にバレたら面倒だな…。


そう思って、紡木は西園寺の登録名を『要注意人物』に書き換えた。


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