西園寺先生は紡木さんに触れたい

「ん〜…今日もあっという間だったね。」


西園寺の声に今まで完全に作業に集中していた紡木はハッとなって時計を見ると、準備室に来てから大体1時間程経っていた。


「残りは明日にしようか。」


「はい。」


そう返事をすると紡木は帰り支度を始めようと椅子から立ち上がろうとした。

しかし西園寺は「あ、ちょっと座ってて。」と言って冷蔵庫を開けると、小さな箱を取り出した。


「うわあ…。」


机の上に置かれたその箱を見るなり、紡木の目は輝き出した。


それは高級店のチョコレートアソートであった。


「紡木さんにと一緒に食べようと思って。疲れたでしょ?」


わたしのために、わざわざ、こんな良いものを??


「え、あ、まあ…。」


一瞬油断して綻ばせた顔をすぐに元に戻すと、紡木はそう返事した。


「チョコレートは完全栄養食品、だもんね。」


そう言う西園寺がいつになく上機嫌である理由は紡木にはわからなかったが、大好きなチョコレートである。遠慮なくいただくことにした。
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