西園寺先生は紡木さんに触れたい
「そういえば、私、どうやってここまで…?」
「ああ、霧島くんがおぶってきてくれたのよ。」
「ええ??」
それを聞いただけでまた蕁麻疹が出そうなほどゾワゾワした。
でも失神してしまった自分が悪い。
それよりも…と、紡木は続けた。
「霧島くん、何か、蕁麻疹に気付いてたりとかしました?」
「ううん、彼、すごく焦ってたし、『俺の睨みが余りにも怖すぎて気を失ったのかも…』とか青ざめてたわよ。」
先生がケタケタと笑う声に続いて、紡木も少し笑った。
あの般若のような顔が青ざめて焦っていたなんて想像したらなんだか笑えてきた。
「…あれ、誰かいるんですか?」
ひとしきり笑った後に、自信が寝ていた隣のベッドが軋む音が聞こえて、紡木は声を潜めて先生に聞いた。
「あ〜…まあ、紡木さんにならいっか。…西園寺先生がいるのよ。寝てるんじゃないかしら。」
いつも快活な先生の少し歯切れの悪い物言いと、聞き慣れない『西園寺』という名前に紡木は首を傾げた。
「あれ、紡木さん知らないの?」
「んー…多分?」
先生の口調からして有名人なのか?それとも自分に関わるがある人なのか?
もう一度記憶を辿ってみても紡木の脳内に西園寺という名前は見つからず、曖昧な答えを返した。
保健室の先生は意外そうな顔をしていたのが、紡木には不思議だったが、そのままもう一度ベッドに戻って天井を見つめた。