西園寺先生は紡木さんに触れたい

「あ、その机の上にあるやつね、紡木さんに。」


西園寺は突然紡木の目の前に置かれた箱を指差した。


「え、あ、ありがとうございます。」


「良かったら食べていって。」


西園寺にそう言われて、紡木は遠慮がちにその箱を開けた。


「わあ…!これ…。」


箱を開けると、日向夏がこれでもかというほど乗ったタルトが現れた。


「美味しそうでしょ?調べたら時期からちょっと外れてるって出てきて焦ったけど、駅前のケーキ屋さんあるでしょ?そこにあってさ〜!」


「え、もしかして今…?」


準備室にずっと居なかったのって、まさかこれを買いに行くために??


そう疑問に思って紡木が問うと、西園寺は当然のように「え、うん、そうだけど。」と答えた。


「先生って………

私のこと餌付けしようとしてます?」


「ええ…。」


長い沈黙の後に続く言葉が、優しい、とか、かっこいい、とかポジティブな言葉が続くと思っていた西園寺は、大きく椅子から崩れ落ちた。

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