西園寺先生は紡木さんに触れたい
「紡木さん、乗って!」
暫くすると見慣れた暗いブルーの車が紡木の目の前に停まった。
窓を開けてそう叫ぶ西園寺の姿を確認すると、紡木は急いで後部座席へと乗り込んだ。
乗り込むと同時にひんやりとした風が紡木の肌を包み込んだ。
「人身事故だなんて大変だったね…熱中症とかなってない?長い間外にいたでしょ?」
早口でそう言う西園寺に、紡木はなぜか笑いが込み上げてきた。
長い間って言ったって、電話を切ってから15分程度しか経ってないし。
それよりも今私を迎えに来ている先生の方が大事でしょ。
「先生こそ、もう補講が始まる時間なのに、いいんですか?」
「いいのいいの!それよりも、補講に1分でも遅れちゃうと問答無用で赤点のままになっちゃうからさ。
それなら僕も一緒に遅れたことにすればオッケーでしょ?本当によかった〜…。」
「…へ?」
てっきり、少しぐらい遅れても大丈夫だと思っていた紡木は、西園寺の言葉を聞いて顔が固まった。
え、そんなの聞いてないし。
先生…ありがとう…
紡木は初めて西園寺に心の底から感謝した。