君だけに捧ぐアンコール
「花音」
私を呼ぶ声。低い声。心地の良い声。
あぁ誰だろう。隆文さんじゃないな。じゃ天国のお父さんかな。
「花音、ついたぞ。起きろ」
ふわり。ゆらゆらしてる。お父さんの抱っこ久しぶりだな。
私もう大人なのに。力持ちだな。
「部屋勝手に入るぞ。」
ベッドの上に寝かされた。ここは、私が育った家。お父さん達と住んでたところじゃない。
じゃお父さんじゃない?また一人になるの?ここに置いて行かれるの?
「…まって」
「待ってろ、水持ってきてやるから。」
怖いよ、一人は嫌だよ。
「いかないで」
「どうした?気持ち悪いのか?」
「ひとりはいや」
「っ」
ベッドの上に誰かがいる。私を上から見つめている。大きな手のひらが、私の頬を包んだ。あぁ一人じゃないのだとそう思ったら、自然と瞼がおりた。