敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「俺をあんな男と一緒にするな」
匡くんが真っ直ぐ私の目を見つめる。
「裏切らないよ、俺は、杏を傷つけたりしない。俺がどれだけお前を好きかわかってないだろ」
「えっ」
好き……?
真剣な表情を浮かべる彼と視線が絡む。次の瞬間、ハッと気が付いた。
「あ、そっか。妹としてって意味だよね」
また勘違いしそうになってしまった。たしか結婚の提案をされた焼肉店でも似たようなことがあったことを思い出す。
匡くんに好きと言われて動揺していると、〝好きと言っても妹としての意味な〟と、はっきり言われた。だから今回もそういうことなのだろう。
「いや、そうじゃない」
けれど、匡くんが首を静かに横に振る。
「俺はずっと杏のことが好きだ。妹としてじゃなくてひとりの女性として愛してる」
愛してる……。
その言葉が頭の中に何度も響く。
「えっ、あの、えっと……」
「杏」
匡くんからの突然の告白にどう反応していいのかわからず視線を泳がせながら口をぱくぱくさせていると、匡くんの腕が背中に回りそっと抱き寄せられた。
「ま、匡くん⁉」
私よりもだいぶ背の高い彼が体を丸めるようにして自身の顔を私の耳元に近付けた。そのまま囁くように口を開く。
「俺は杏を大切にしたいし幸せにしたい。困っているなら助けるし泣いているなら胸を貸す。ちゃんと守るよ。俺は、お前のことが好きでたまらない」
私を抱き締める匡くんの腕の力が強くなる。せっかく貰った花束が潰れてしまいそうだ。