敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
しばらく進んだところで匡くんの腕を離した。振り返ると、なぜか匡くんが笑いをこらえている。なぜ?
「お前はいつから俺の彼女になったんだ」
匡くんの指が私の額をピンと弾いた。
「どう見ても妹だろ。お前と俺はまったく釣り合わない」
「ひどいっ!」
せっかく嘘までついてあの女性たちから助けてあげたのに。私はむっと口を引き結んだ。そんな私の髪を匡くんがくしゃっと少し乱暴に撫でる。
「ほら、早く行くぞ。慎一のプレゼント買うんだろ。貴重な俺の時間をもっと杏にあげるから特別にお昼ご馳走してやるよ。ハンバーグか? それともオムライス? オレンジジュースも飲む? プリンも付けてやろうか」
「……なんか子供扱いされてる気がする」
「俺からしたら子供だ」
そう言って私の頭をぽんぽんと撫でてから匡くんが背を向けて先を進む。
中学生と大学生。当時はその差がとても大きくて、決して近付くことも埋まることもないと思っていた。
それなのに匡くんはいつから私を妹としてではなく、ひとりの女性として好きになってくれたのだろう――。