敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
ダーズンローズは昔のヨーロッパで行われたプロポーズで、直訳すると1ダースのバラ。つまり十二本のバラという意味があり、その一輪一輪には意味が込められている。男性は〝それらのすべてをあなたに捧げます〟という気持ちを込めて女性に贈るそうだ。
「それで、杏ちゃんはなんて答えたの?」
バターのいい香りがするパウンドケーキを口に含むと、夕香さんに尋ねられた。
「ダーズンローズって承諾の返事の代わりに女性は花束の中から一輪を抜き取って男性の胸ポケットにさすのよ」
「そうなんですか?」
もちろん知らなかったので私はそれをしていない。
匡くんはどうして知っていたんだろう。誰かに聞いたのかな。それとも自分で調べた?
もしも夕香さんにダーズンローズの意味を教えてもらわなければ、私は匡くんのプロポーズの意味をずっと知らないままだったかもしれない。
「それにしてもよかったわ。そんなに素敵なプロポーズをしちゃうくらいだから、匡智さんは杏ちゃんのことが大好きなのね」
紅茶に口をつけた夕香さんがふんわりと微笑んだ。
離婚をすると決めたとき、一番に相談に乗ってもらったのが彼女だった。たくさん心配をかけさせてしまったから、私が兄の親友の匡くんと再婚したと知ってホッとしているのだろう。