敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
衆目を集めながら颯爽と進んでくる彼らは格好からしておそらくパイロットだろう。
「ん? あれは匡か?」
「え、匡くん?」
兄の呟きを聞いて、私はじっと目を凝らす。
「あ、ほんとだ。匡くんだ」
カジュアルな普段着の彼しか見たことがないので、初めて見るパイロットの制服姿にドキッと胸が跳ねる。ただでさえ背が高く見目の良い匡くんの制服姿は思わず目が逸らせなくなるほど凛々しくてかっこいい。
これからフライトに出るのだろうか。たしかパリ行きの便に搭乗すると言っていたはず。
ぽけーっと見惚れていると、隣に立つ兄が私を肘で小突いてくる。
「話し掛けてこいよ」
「え? しないよ、そんなこと」
最近は匡くんの顔を見るだけで心が落ち着かなくなるのに、見慣れない制服姿の凛々しい彼を目の前に動揺しないで話せる自信がない。
そもそも仕事中なのだから話し掛けるのは普通に考えてよくないと思う。
けれど、そんなことはお構いなしの図太い神経を持つ兄が「ちょっとくらいいいだろ」と、ぶんぶんと手を振り始めてしまった。
「おーい、匡」
「あっ、お兄ちゃんやめてよ」
兄の大声に気付いた匡くんの視線が私たちを捉えて目を丸くさせた。それから隣を歩く同僚男性に声を掛けてからこちらに向かって駆け寄ってくる。