敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

「でも、沖縄で再会したときはネイルの良さがわからないって言われちゃったけどね」
「確かに、言ったな。あまりにも杏がドヤ顔で自慢してくるから、からかいたくなった」
「ひどいっ!」

 そう叫んで匡くんを睨むけれど、すぐに表情が崩れて笑ってしまう。

「私たちすごいね。お互いの言葉で将来の仕事を決めちゃうなんて」
「だな」

 頷いた匡くんが、不意にジャケットのポケットに手を入れる。そこから取り出したのは小さな箱。その中になにが入っているのかはすぐにわかった。

「今日の昼間、時間があったから受け取りに行ってきたんだ」

 匡くんの手が蓋を開けると一粒ダイヤが輝く指輪が出てくる。私の左手を持ち上げた彼がそれを薬指につけてくれた。

 エンゲージリングだ。

 一緒に買いに行ったのはマリッジリングだけで、エンゲージリングは必要ないと断ったはずなのに。いつの間に購入していたのだろう。

「やっぱりこの指輪も杏の指に嵌めたかった」

 穏やかな瞳で私を見つめる匡くんの口許に柔らかな笑みが浮かぶ。

 ふとプロポーズのときに貰った十二本のバラのことも思い出したら、瞳に涙が溢れてきた。
< 155 / 156 >

この作品をシェア

pagetop