敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「匡くん、私が離婚したこと知らなかったみたい。お兄ちゃんがもう話してると思ってた」
豚カツをもぐもぐ食べながら隣にちらりと視線を送ると、みそ汁をすすっていた兄がお椀から口を離す。
「聞かれてもいないのにそんなこと俺から喋るかよ。結婚と違って離婚の報告ってなんか話題に出しづらいだろ」
「そ、そうだよね……」
引きつった笑みを浮かべて頷いた。
たしかに、私も友人たちに離婚の報告をするときはだいぶ気まずかった。友人たちも反応に困っているようだったし、離婚というのはやはりそれだけセンシティブな話題なのかもしれない。
それから夕飯を終えても兄は自分の家に帰ることなく、ソファに座りながらテレビを見てくつろいでいた。
母に代わって洗い物を終えた私はダイニングテーブルの椅子に腰を下ろす。すると、対面に座って雑誌を読んでいた母がふと顔を上げて私を見つめる。
「そうだわ。杏ちゃんに大事な話があるんだけどいいかしら」
「大事な話?」
母の視線がソファにいる兄に向かった。
「慎一、そろそろ杏ちゃんにもあの話をした方がいいわよね」
「そうだな、そうするか」
母の言葉を受けた兄はリモコンを手に取りテレビを消すと、私と母のいるダイニングテーブルまでやって来る。夕飯のときのように私の隣ではなく母の隣に腰を下ろした。