敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
大事な話ってなんだろう……?
この様子だと兄はすでに知っているようで、なにも知らない私は母と兄の顔を交互に見た。
母が言いづらそうに口を開く。
「実はね、近々この家を売りに出そうと思っているの」
「へ?」
きょとんと目を丸くしてしまう。
築三十五年の十五階建て分譲マンション。母が兄を産んだ一年後に十三階の一室を父が購入した。この家を売る?
「えっ、どうして」
そう呟けば、兄が教えてくれる。
「母さん、足を悪くしただろ。生活も不便そうだから俺たち家族と同居しようっていう話が半年前からあるんだ」
「それ私知らなかった」
「その頃お前、結婚して家を出てたから。まずは俺らだけでしっかり話をまとめてから杏に話そうと思ってたんだ」
それなのにまさか離婚して出戻ってくるとは思わなかったけどな、と呟いた兄の言葉に気まずくなった私は目線を落とす。
そんな私に気にすることなく兄が言葉を続ける。
「それで、夕香とも相談してバリアフリーの戸建を新しく建てることになったから、この家は売りに出すことに決まった」
「決まったの?」
目線を上に戻して兄に確認すると「決まった」と、はっきり返されてしまった。
決定事項なんだ。しかも私の知らない間にそこまで具体的に話がまとまっていたなんて。兄たちにそんな気はないのだろうけれど、私だけが除け者にされたみたいでちょっぴり悲しい。
でも、母と兄家族の同居については賛成だ。