敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている



 その夜、お風呂も歯磨きも済ませた私は自室のベッドに浅く腰を下ろして預金通帳と睨めっこをしていた。

「ああは言ってみたものの、やっぱりひとり暮らしは厳しいなあ」

 じっと見つめているだけでそこに記載されている数字がどんどん増えていけばいいけれど、そんな魔法のようなことが起きるわけもなく。私は預金通帳を投げ捨てた。

 ベッドに寝転がり枕に顔をうずめる。

 正直なところお金の余裕はまったくない。今はネイルサロンの経営で精一杯で、生活費に回せるお金がほとんどないのだ。

 ひとり暮らしをするとなると家賃に光熱費、食費はすべて自分で払わないといけない。そこにお金を取られてしまうと、今までのようにネイルサロンを続けていくのはたぶん難しい。

「どうしよう」

 寝転んだままお気に入りの抱き枕に腕と足を絡めてぎゅっと抱き着く。すると、ベッドの上でスマートフォンが振動を始めた。

 むくりと顔を上げて画面を確認すると〝匡くん〟と表示されている。どうやら電話が掛かってきているらしい。

 体を起こしてベッドの上に座り直した私は、スマートフォンを手に取り目を瞬かせた。

 どうして匡くんから電話が……?

 不思議に思いつつ、ためらいがちにスマートフォンを耳に当てる。
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