敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「……もしかして匡くん、私の離婚について根掘り葉掘り聞こうとしてるでしょ」
『根掘り葉掘り聞くつもりはないが、昨日からずっと気にはなってる』
たしか昨日は離婚の理由を答えようとしたところで匡くんが同僚の赤嶺さんに呼ばれて、その話題は強制終了となった。
その続きが気になって匡くんは私を食事に誘っているようだけれど、できることなら離婚理由についてはあまり触れられたくなかった。
元夫に不倫されて捨てられた惨めな自分を匡くんには知られたくない。だから昨日も離婚理由について尋ねられたときすぐに言葉を返せなかったのだと思う。
匡くんと食事はしたい。でも離婚理由について話すのは気が重い。そんな思いから食事の誘いの返事を渋っていると、不意に電話の向こうから『焼肉』と声が聞こえた。
『杏は肉が好きだよな。焼肉ご馳走するよ』
どうやら匡くんは私の返事が遅いことから、私が食事の誘いにあまり乗り気でないことを勘付いたのかもしれない。
好物の肉で私を誘い出そうとしているけれど、その手には乗るものか。
でも、焼肉食べたいな……。
しばらく口にしていないかもしれない。