敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
しばらく雑誌をめくりながらお店の候補を挙げていると、機内に男性の声でアナウンスが入った。
『ジャパンウイングエアライン四七五便をご利用いただきまして、まことにありがとうございます。機長よりご案内いたします』
どこか懐かしさを覚えるような低いけれどよく通る聞きやすい声に耳を傾けつつ、視線を雑誌に落としたまま、〝あっ、このお店のラフテー美味しそう〟と胸を高鳴らせる。
アナウンスでは飛行機の現在の高度や速度を機長が知らせているが、フィートやマッハと言われたところでよくわからない。
とりあえず飛行は順調らしいので、このまま無事に目的地に到着できますようにと祈りながら、機内モードにしてあるスマートフォンのメモアプリに気になるお店の情報を打ち込んだ。
『那覇空港の到着は十七時三十分を予定しております。現在入っている情報によりますと、沖縄の天候は雨。気温は三十度です。なお、本日は接近中の台風の影響を受けまして、少々大気が不安定な中の飛行を予定しております』
えっ……それってもしかして揺れるの⁉
私は雑誌から勢いよく顔を上げて、機長のアナウンスにじっと耳を傾ける。
今まであまり気にならなかったけれど、隣の席で寝ているおじさんの微かな鼻息といびきが耳障りだ。けれど起こすわけにもいかず機長の声だけに集中する。