敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

 詳しく話を聞こうとしたところで赤嶺に呼び戻されてしまい、それ以上は杏と会話を続けることができなくなった。

 そのあとの食事は料理の味なんてまったくしなかったし、振られた会話にもどう返していたのか覚えていないほど心ここにあらずの状態だった。

 慎一から杏の結婚報告を受けた一年前。俺は、杏を好きだという気持ちを手放さなければならないと思った。他の男の妻になった杏を手に入れることはもうできないのだから。

 杏が幸せならそれでいい。この一年、必死に自分に言い聞かせ続けてきたというのに、離婚したってどういうことだ。杏は、幸せになれなかったのか。


 それなら俺が、今度こそ杏を手に入れたい。


 妹みたいに思っていたはずの杏にそれ以上の感情を抱いていると気付いたのは、慎一から杏の結婚報告を受けたときだった。

 いや、それ以前からなんとなく自分の気持ちには気付いていた。

 最初のきっかけは高校生の杏が同じ高校の制服を着ている男子生徒とキスをしているのを見てしまったとき。杏の唇を当たり前のように奪っている男に嫉妬のような感情が沸き起こった。

 その次は杏が二十歳の成人式を迎えたとき。たまたま実家に戻っていた俺は、これから成人式に向かう振袖姿の杏と出くわした。

 会うのが久しぶりだったこともあり、杏が嬉しそうに駆け寄ってきて俺の腕に自分の腕をからめてはしゃいできた。
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