敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

『匡くん、久しぶり。私これから成人式に行くの。見て、振袖可愛いでしょ』

 メイクと髪型、服装のせいか大人っぽくきれいになった杏に女性としての成長を感じて、不覚にもドキッとした。俺の腕に触れている杏の手を意識してしまい、少し強引に引き剥がしたのを覚えている。

 今までの俺なら妹のように思っている杏にべたべた触れられたところでなにも感じはしなかったのに。なぜかあの日は杏に触れられるのを拒んでしまった。

 たぶんもうそのときには杏をひとりの女性として意識し始めていたのだと思う。

 それでも俺は今まで恋愛対象でなかった杏をそういう目で見てしまう自分自身をどうしても受け入れることができなかったし、手を出してはいけないと必死にブレーキをかけていた。

 たまに実家に帰って顔を合わせても突き放すように素っ気ない態度を取り、杏とはさらに距離を取ろうとした。

 けれど、その三年後に慎一の結婚式に参列したとき。

 花嫁が投げるブーケが目の前に落ちてきて思いがけずキャッチしてしまった杏がきょとんとした表情を見せたあと、嬉しそうに顔を綻ばせる姿に思わず見惚れてしまい、ああもうダメだと思った。

『匡くん見て。私ブーケ取っちゃった。次に結婚するのは私かもしれないよ』

 杏はどんな男と結婚するのだろう。そんな想像をするだけで胸の中にドス黒いものが広がっていき、いい加減にもう認めなければならなかった。

 俺は杏が好きだ。

 触れたいし、抱きしめたい。心も体も全部俺のものにしたい。
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