敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
いっそのこと寝てしまおうか。そうすればこの恐怖から逃れられるかもしれない。
目を瞑るもののこの状況ではまったく眠れなかった。
隣のおじさんはよっぽど眠いのか羨ましいことにさっきからずっと寝ている。シートベルト着用サインが出たことにも気付かなかったので私が起こして教えてあげたほどだ。彼はそのあとすぐにまた寝たけれど。
その後もシートベルト着用サインは消えることなく機体は上下に揺れたまま、それでもなんとか那覇空港上空付近までやって来た。
着陸開始のアナウンスが入る。ようやくこの生きた心地のしない状況から抜け出せるのだとホッと息をついたのも束の間、那覇空港の上空には強い風が吹き荒れているらしく機体が横に振られる。再び恐怖が押し寄せた。
なんだかもう泣いてしまいそうだ。
すると、下降を続けていた機体がなぜかまた空に向かって飛び立っていくのがわかった。
しばらくして機内に客室乗務員のアナウンスが流れる。
「当機は着陸態勢に入っておりましたが再び上昇しております」
嘘でしょー⁉
心の中で思わず叫んでしまった。
どうやら着陸ができなかったらしい。この状況に周囲の乗客たちからも不安の色が浮かんでいる。