敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
「目的地意外の空港に着陸することですよ。私は若い頃から出張で飛行機によく乗るからゴーアラウンドもダイバートも経験したことがあるけど、ダイバートになるとちょっと面倒だな。天候が回復して、機長がなんとか着陸させてくれるといいんだけど」
「そうですね」
たしかに、そのダイバートというのになったら大変かも。那覇空港に辿り着けないってことだよね。そうなったら明日の予約に間に合うかな。
揺れる機内で不安な気持ちを抱えたまま時間だけが経過していく。
しばらくすると、上空で旋回を続けていた機体が再び着陸態勢に入るというアナウンスが流れた。
先ほどと同様に気流の影響で安全な着陸が見込めない場合は進入をやり直し、安全な高度まで上昇するとのこと。そうならずに次こそは無事着陸できることを祈るばかりである。
叩き付けてくる雨風の中、強く吹く風に機体を揺らしながらも下降を続けていると、乗客からは小さな悲鳴があがる。
私はというと恐怖が最大限に膨れ上がりもはや声すら出せない。
とりあえず今はこの機体を操縦している名前も顔も知らない機長を心の中で精一杯応援する。今この瞬間この機体の中で一番神経をすり減らしているのは間違いなく彼だろう。私たち乗客の命を背負って操縦桿を握っているのだから。